出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1062 改造社『現代日本文学全集』

前回、円本の嚆矢である改造社『現代日本文学全集』にふれ、その第五十編が『新興文学集』であることを既述しておいた。それであらためて気づいたのだが、本連載の目的のひとつは三百数十種に及ぶとされる円本への言及に他ならないにもかかわらず、これまで…

古本夜話1061 『新選名作集』と『新選前田河広一郎集』

昭和時代に入ってからの新潮社のいくつかの文学全集を見てきたが、ライバル視されていた改造社のほうはどうだったのだろうか。ただ新潮社と異なり、改造社は社史も全出版目録も刊行していないので、これまでそれらをたどってこなかった。だが最近になって、…

古本夜話1060 新潮社『日本文学大辞典』

改造社の『現代日本文学全集』に先駆けされた新潮社の雪辱戦は、『現代長篇小説全集』や『昭和長篇小説全集』によって果たされたわけではなく、その文芸書出版の面子をかけた起死回生といっていい企画は、昭和七年の『日本文学大辞典』だったと思われる。『…

古本夜話1059 子母澤寛『突つかけ侍』

前回の『昭和長篇小説全集』の14が子母澤寛の『突つかけ侍』であることを示しておいた。これは『新潮社四十年』が述べているように『現代長篇小説全集』と異なり、「この方は、時代物の大衆小説も加へた」ことによっている。それは明らかに平凡社の『現代大…

古本夜話1058 新潮社『昭和長篇小説全集』と三上於菟吉『街の暴風』

続けて前々回挙げた『昭和長篇小説全集』も取り上げておこう。まずそのラインナップを示す。 1 菊池寛 『日像月像』 2 白井喬二 『伊達事変』 3 三上於菟吉 『街の暴風』 4 吉川英治 『松のや露八』 5 久米正雄 『男の掟』 6 中村武羅夫 『薔薇色の道』 7 吉…

古本夜話1057 「泰西名著文庫」と高橋五郎訳『プルターク英雄伝』

もう一編、前回の佐藤紅緑『愛の順礼』に関連して続けてみたい。それはこれも前回既述しておいたように、予約出版の円本の範となった国民文庫刊行会と鶴田久作が結びついているからでもある。 『愛の順礼』の主人公浦田六郎は父の再婚の失敗による実家の没落…

古本夜話1056 新潮社『現代長篇小説全集』と佐藤紅緑『愛の順礼』

本連載1053の新潮社の『現代小説全集』はそれだけで終わったのではなく、昭和円本時代へと確実に継承され、昭和三年の『現代長篇小説全集』全二十四巻へと結実していったと思われる。 (『現代小説全集』) (『現代長篇小説全集』第二巻) 昭和円本時代…

古本夜話1055 生田春月『相寄る魂』

本連載1050などの生田春月『相寄る魂』全三巻はもはや単行本も入手できないし、読者もいないと思われる。『新潮社四十年』で確認してみると、大正十年に前巻と中巻、十三年に下巻が出されている。『相寄る魂』は大正十年から十二年にかけて書かれた二千…

古本夜話1054 生田花世と横瀬夜雨編『明治初年の世相』

横瀬夜雨は中村武羅夫の『明治大正の文学者』には出てこないけれど、『現代詩人全集』では『河井醉茗集・横瀬夜雨集・伊良子清白集』として一冊が編まれている。また戸田房子の『詩人の妻 生田花世』において、夜雨は花世の詩作の師として登場している。 『…

古本夜話1053 新潮社『現代小説全集』

あらためて『新潮社四十年』や『新潮社七十年』に目を通していると、双方において、大正十四年四月から刊行の『現代小説全集』 に関する注視に気づいた。この全集に対して、これまで目を向けていなかったのは何よりも実物を入手していなかったことに尽きるの…

出版状況クロニクル147(2020年7月1日~7月31日)

20年6月の書籍雑誌推定販売金額は969億円で、前年比7.4%増。 書籍は489億円で、同9.3%増。 雑誌は480億円で、同5.5%増。 その内訳は月刊誌が395億円で、同5.7%増、週刊誌は84億円で、同4.6%増。 返品率は書籍が37.6%、雑誌は37.7%で、月刊誌は37.4%、週刊誌…