出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1031 百田宗治のポルトレ

本連載1028の安西冬衛『軍艦茉莉』(厚生閣書店)の巻末広告に、「現代の芸術と批評叢書」に続いて、『詩と詩論』と百田宗治の著作が掲載されている。百田のそれらは『新しい詩の解題とその作り方』『詩の鑑賞』『陋巷風物詩 冬花帖』『鑑賞 芭蕉句抄』…

古本夜話1030 阿部知二『冬の宿』

本連載787、789、869などの阿部知二が「現代の芸術と批評叢書」の一冊として、昭和四年に処女評論集『主知的文学論』を刊行していることを既述しておいた。これは入手しておらず、未読だが、『日本近代文学大事典』に「主知主義」という立項がある…

古本夜話1029 西脇順三郎『ヨーロッパ文学』とジョイス

本連載1016の春山行夫『ジョイス中心の文学運動』刊行の半年前、やはり第一書房から昭和八年五月に、西脇順三郎の『ヨーロッパ文学』が出されている。西脇の「序」によれば、この編集も主として春山によっているので、これらの多くが『詩と詩論』に発表…

古本夜話1028「現代の芸術と批評叢書」と安西冬衛『軍艦茉莉』

伊藤整の『新心理主義文学』を含んだ「現代の芸術と批評叢書」は『詩と詩論』の創刊に寄り添うようにして、昭和四年から刊行され始めた。もちろん編輯責任者は春山行夫であり、「新興芸術の精華を網羅せんとする」として、次のように謳われている。 出版界の…

古本夜話1027 春山行夫『文学評論』と小林秀雄

昭和九年に春山行夫は厚生閣書店から『文学評論』を上梓している。これは菊判三七〇ページに及び、春山の「私の『セルパン時代』」(『第一書房長谷川巳之吉』所収、日本エディタースクール出版部)によれば、昭和八年に厚生閣を退社するにあたって、社長の…

古本夜話1026 伊藤整と小林秀雄「心理小説」

前回、ジョイスの伊藤整たちの『ユリシーズ』の本邦初訳に対して、英文学アカデミズムにおける面白くない思いが潜み、それが川口喬一の『 昭和初年の「ユリシーズ」』にも見え隠れしていることを既述しておいた。 それは仏文学アカデミズムの系譜に属する小…

古本夜話1025 伊藤整『新心理主義文学』と川口喬一『昭和初年の「ユリシーズ」』

本連載1016の昭和八年の春山行夫の『ジョイス中心の文学運動』に先行して、昭和七年に伊藤整の『新心理主義文学』が、やはり春山編集の「現代の芸術と批評叢書」の一冊として、厚生閣書店から刊行されている。ただ私の場合、これは未見だし、入手してい…

古本夜話1024 『詩神』と『現代詩選集』

続けて二回にわたり、新潮社の『日本詩集』を取り巻いていた詩のリトルマガジンに言及しておいた。そこで挙げてこなかったが、やはり同様の『詩神』があって、復刻ではない実物の昭和五年二、四、五、七、八月号の合本を所持している。いずれも『詩神』を示…

古本夜話1023 内藤鋠策と抒情詩社

前回詩話会にふれたが、大正後期の呉越同舟であるとはいえ、この当時最大の詩人団体としての詩話会を敵に回した歌人がいる。それは内藤鋠策である。内藤はまた出版社の抒情詩社を立ち上げ、詩雑誌『抒情詩』を大正元年に創刊している。その『抒情詩』の同十…

古本夜話1022 新潮社『日本詩集』と菊地康雄『青い階段をのぼる詩人たち』

岩野泡鳴も関係し、本連載1008でも『日本詩集』が大正を代表する詩人の集まりだったという伊藤整の証言を引いておいたばかりだ。ただ新潮社の詩話会編『日本詩集』は紅野敏郎の『大正期の文芸叢書』にも掲載されていないし、「叢書」とも銘打たれていな…

古本夜話1021 平泉澄『中世に於ける社寺と社会の関係』

筧克彦『神ながらの道』に続いて、やはり大正十五年に至文堂から、平泉澄の『中世に於ける社寺と社会の関係』も出版されている。後に平泉も筧と並ぶ皇国史観のイデオローグとして知られていくが、大正時代には新進の日本中世研究者であり、その特異な視線は…

出版状況クロニクル144(2020年4月1日~4月30日)

20年3月の書籍雑誌推定販売金額は1436億円で、前年比5.6%減。 書籍は916億円で、同4.1%減。 雑誌は519億円で、同8.1%減。 その内訳は月刊誌が434億円で、同8.5%減、週刊誌は84億円で、同6.4%減。 返品率は書籍が25.5%、雑誌は40.7%で、月刊誌は40.6%、週刊…