出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

古本夜話1242「中篇小説叢書」と藤森成吉『旧先生』

しばらく間があいてしまったが、ここで新潮社に戻る。本探索1203の「海外文学新選」と併走するように、新潮社から「中篇小説叢書」が刊行されていた。同じく四六判並製、一六〇ページのフォーマットだが、装幀は佐藤春夫によるとされる。この「叢書」は次の…

古本夜話1241 廣文堂『小さい社会学』と新しい高等学校市場

『近代出版史探索Ⅵ』1198で廣文堂書店を取り上げ、この版元が大正時代前半には小中村清矩遺著『有聲録』や黒岩周六『実行論』などの多くの「クロース綴函入頗美本」を刊行していたが、譲受出版と見なされるかたちで、石川文栄堂へと版権が移ったことを既述し…

古本夜話1240 中央出版社の「仏教・精神修養書」

本探索1209の「袖珍世界文学叢書」を刊行した中央出版社に関して、新たな発見があったので、それを書き留めておきたい。 浜松の典昭堂で、背文字も定かならぬ一冊の裸本を目にした。何気なく手にしてみると、それは中央出版社から出された、日下敞道『加持祈…

古本夜話1239 松山敏、愛文閣『レ・ミゼラブル』、巧人社「世界詩人叢書」

本探索1208の西牧保雄訳『女優ナナ』と同1218の堺利彦訳『哀史梗概』に絡んでの話だが、ユーゴー原著、松山敏訳『レ・ミゼラブル(噫無情)』を入手している。これは大正十年に著訳者を松山として、神田区錦町の木村愛治郎を発行者とする愛文閣から刊行され…

古本夜話1238 面家荘佶、佐藤春夫『李太白』、而立社『歴史物傑作選集』

佐藤春夫の『李太白』という短編集がある。大正十三年に発行者を面家荘佶とする赤坂区青山南の而立社から、『歴史物傑作選集』の一冊として刊行されている。これはタイトルの「李太白」を始めとする佐藤の「歴史物」八編を収録したものだが、その巻頭に「編…

古本夜話1237 雄文閣、中村吉蔵『明治畸人伝』、日高只一「新時代学芸叢書」

本探索で続けてふれてきた新潮社や天佑社に関係の深い中村吉蔵に関して、触発された一編を書いておきたい。それは手元に中村の『明治畸人伝』なる一冊があり、一度書いておくべきだと考えていたからだ。同書は昭和七年に小石川区原町の井上垂穂を発行者とす…

古本夜話1236 再びの聚英閣と聚芳閣

これは何度もふれているが、以前に「聚英閣と聚芳閣」(『古本屋散策』所収)を書き、他にも『近代出版史探索Ⅵ』1179などで、聚英閣がゾラの井上勇訳『制作』を刊行していたこと、また『同Ⅵ』116で聚英閣に井伏鱒二が編集者として在籍していたことを取り上げ…

古本夜話1235 小栗虫太郎『白蟻』、ぷろふいる社、熊谷晃一

同じく沖積舎からもう一冊、小栗虫太郎の『白蟻』も覆刻されているので、これも取り上げておくべきだろう。これは表題作の他に、「完全犯罪」「夢殿殺人事件」「聖アレキセイ寺院の惨劇」を収録した中編集とよんでいい。「推讃」は江戸川乱歩、甲賀三郎、水…

古本夜話1234『黒死館殺人事件』を戦地へと携えていった青年は誰か

『ドグラ・マグラ』といえば、やはり同年の昭和十年に新潮社から刊行された小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』を想起せざるをえない。それに『黒死館殺人事件』も同じく沖積舎から平成二年に覆刻版が出ているのである。(沖積舎版)(新潮社版) (沖積舎版) …

出版状況クロニクル165(2022年1月1日~1月31日)

21年12月の書籍雑誌推定販売金額は1030億円で、前年比10.2%減。 書籍は541億円で、同2.0%減。 雑誌は489億円で、同17.8%減。 雑誌の内訳は月刊誌427億円で、同18.4%減、週刊誌は62億円で、同14.0%減。 返品率は書籍が30.0%、雑誌は38.5%で、月刊誌は37.2%、…