出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

古本夜話1285 カウツキー、小池四郎訳『五ヶ年計画立往生』

左翼文献は『近代出版史探索Ⅵ』1141の『大日本思想全集』の先進社からも刊行され、入手しているのは昭和六年のカール・カウツキー、小池四郎訳『五ヶ年計画立往生』で、サブタイトルは「サウィエート・ロシアの革命的実験は成功したか?」とある。(『大日本…

古本夜話1284 大森義太郎『唯物弁証法読本』と永田広志『唯物弁証法講話』

本探索1279で、プロレタリア文学や社会運動の隆盛に伴う多種多様な左翼文献の翻訳出版を指摘しておいた。それは『近代出版史探索Ⅱ』213に典型的な左翼系小出版社だけでなく、大手出版社にも及んでいて、時代のトレンドとして売れ行きもよかったのである。 そ…

古本夜話1283 川添利基訳『劇場革命』、中村雅男訳『デッド・エンド』、テアトロ社

前回日本プロレタリア演劇同盟(略称プロット)発行の機関誌『プロレタリア演劇』を挙げておいたが、残念ながらこの雑誌は復刻されていない。それでも『日本近代文学大事典』第五巻「新聞・雑誌」には三段に及ぶ解題があり、昭和五年に創刊、六年に『プロッ…

古本夜話1282 『プロレタリア文化』、波多野一郎、寺島一夫

もう一冊、近代文学館の「複刻 日本の雑誌」(講談社)にプロレタリア関係がある。それは『プロレタリア文化』で、これも『日本近代文学大事典』第五巻「新聞・雑誌」に解題が見出せる。その解題を繰ってみると、その前後に思いがけずにプロレタリアがタイト…

古本夜話1281 円本としての「囲碁大衆講座」

やはり前回の典昭堂で、平凡社の「囲碁大衆講座」第九輯を見つけた。これも昭和六年の出版で、前回の『世界裸体美術全集』と併走するように刊行されていたのである。平凡社の 拙稿「平凡社と円本時代」(『古本探究』)所収)では実用的な講座物と見なし、円…

古本夜話1280 平凡社『世界裸体美術全集』

前回、ハウゼンスタイン『芸術と唯物史観』は原著の内容とタイトルから考えれば、『芸術と裸体』としたほうがふさわしいのではないかと述べておいた。 (『芸術と唯物史観』) ところが『芸術と唯物史観』との関連は不明だが、昭和六年になって平凡社から『…

古本夜話1279 ハウゼンスタイン『芸術と唯物史観』と阪本勝

本探索でプロレタリア文学や社会運動の隆盛に伴う、いくつものリトルマガジンの創刊をみてきたが、それらは多くが従来の出版社によるものではない。そのことは翻訳に関しても同様であり、想像する以上に多種多様な訳書が刊行されたと思われる、そうした典型…

古本夜話1278 希望閣、野々宮三夫『世界プロレタリア年表』、市川義雄

昭和に入ってのプロレタリア文学全盛の時代にはそれらの分野に類する多くの文献が刊行されていたはずで、野々宮三夫『世界プロレタリア年表』も、その一冊に挙げられるだろう。同書は菊判函入、上製一九四ページとして、昭和七年に希望閣から出されている。 …

古本夜話1277 岩波書店と『思想』創刊号

前回の改造社『社会科学』創刊号は浜松の典昭堂で見つけたものだが、そこには岩波書店の『思想』創刊号もあり、ともに入手してきたのである。創刊号こそ前者が大正十四年、後者が同十年と異なるものの、判型、表紙レイアウトもほぼ同じで、創刊定価のほうも…

古本夜話1276 改造社と『社会科学』創刊号

手元に大正十四年六月と日付入りの『社会科学』創刊号があって、これは前々回の『我等』と異なり、近代文学館の「複刻日本の雑誌」の一冊ではなく、実物を入手している。(『社会科学』) (『我等』創刊号) この『社会科学』は『日本近代文学大事典』第五巻…

出版状況クロニクル169(2022年5月1日~5月31日)

22年4月の書籍雑誌推定販売金額は992億円で、前年比7.5%減。 書籍は547億円で、同5.9%減。 雑誌は445億円で、同9.5%減。 雑誌の内訳は月刊誌が382億円で、同9.0%減、週刊誌は63億円で、同12.2%減。 返品率は書籍が28.5%、雑誌は40.2%で、月刊誌は39.3%、週刊…

古本夜話1275 『我等』と大山郁夫

前回、大正時代における雑誌の『社会思想』『我等』『批判』という系譜にふれた。このうちの『我等』は『日本近代文学大事典』第五巻に一ページ近い解題があるので、要約してみる。 (『我等』創刊号) 総合雑誌『我等』は大正八年に創刊され、昭和五年は『社…

古本夜話1274 改造社『社会科学大辞典』と社会思想社、荘原達

本探索1270で、葉山嘉樹の『海に生くる人々』が堺利彦と青野季吉を通じて、改造社の山本実彦のところに持ちこまれていたことを記述しておいた。改造社は大正八年の『改造』の創刊、翌年には賀川豊彦の『死線を越えて』のベストセラー化、同十五年は『現代日…

古本夜話1273 野田映史編『別役実の風景』、『季刊評論』、烏書房

これは戦後に飛んでしまうのだが、やはり青野季吉絡みなので、ここで続けてふれておくことにしよう。 最近論創社から野田映史編の追悼集『別役実の風景』が刊行され、恵送された。別役たちが早稲田小劇場を立ち上げる前に属していた劇団自由舞台の昭和四十年…

古本夜話1272 青野季吉とトロツキイ『自己暴露』

青野季吉『文学五十年』には出てこないけれど、彼の訳として、トロツキイ『自己暴露』がある。これは「わが生活(Ⅰ)」というサブタイトルを付し、昭和五年にアルスから刊行されている。おそらく続刊と同工の函はいかにも当時のプロレタリア文学出版物を彷彿…

古本夜話1271 青野季吉『文学五十年』と葉山嘉樹のデビュー

前回、葉山嘉樹の「淫売婦」などが『文芸戦線』に発表されたのは青野季吉を通じてだったことを既述しておいた。これには少しばかり補足も必要なので、もう一編書いてみる。 まずは『文芸戦線』だが、これはその半分ほどが近代文学館により復刻されている。し…

古本夜話1270 葉山嘉樹『海に生くる人々』

本探索1255の小林多喜二の『蟹工船』の成立にあたって、葉山嘉樹の『海に生くる人々』が大きな影響を与えたことは近代文学史においてよく知られていよう。この日本プロレタリア文学の記念碑とされる『海に生くる人々』は大正十五年に改造社から刊行され、例…

古本夜話1269 スタア社『亜米利加作家撰集』

前回の奢灞都館の「アール・デコ文学双書」のラインナップを見ていて思い出されたのは、スタア社の『亜米利加作家撰集』のことである。これは昭和十五年刊行の並製三四五ページの一冊で、ヘミングウエイの「五萬弗」が収録されていたことから、『明治・大正…

古本夜話1268 エリナ・グリン、松本恵子訳『イット』と奢灞都館「アール・デコ文学双書」

前回の松谷与二郎『思想犯罪篇』の巻末広告にエリナア・グリーン、松本恵子訳『イツト』が見出された。そこには「世界的流行の尖端イツトの原本! クララ・ボウによつて全世界にふりまかれたイツト イツトとは? 人生の大問題たる性関係、性心理、性道徳を一…

古本夜話1267 天人社「世界犯罪叢書」と松谷与二郎『思想犯罪篇』

前々回の天人社に関して、もう一編続けてみる。この版元に関しては拙稿「小田律と天人社」(『古本探究Ⅲ』所収)で、ヘミングウェイ、小田律訳『武器よ・さらば』の初訳などに言及し、不完全ながら『現代暴露文学選集』や「新芸術論システム」の内容を紹介し…

古本夜話1266 牧野信一『鬼涙村』

前回に下村千秋に言及したこともあり、ここで牧野信一にもふれておきたい。牧野は下村や浅原六朗と異なり、『現代暴露文学選集』には名前を連ねていないけれど、彼らは大正八年創刊の同人誌『十三人』の中心メンバーだった。しかも下村や牧野ほどではないけ…

古本夜話1265 下村千秋『ある私娼との経験』と平輪光三『下村千秋 生涯と作品』

前回、天人社の『現代暴露文学選集』をプロレタリア文学シリーズのひとつとして挙げたが、これはすでに『近代出版史探索Ⅱ』394で取り上げていることを思い出した。 そこで言及したのはその一冊の中本たか子『朝の無礼』で、彼女がプロレタリア文学者にして蔵…

出版状況クロニクル168(2022年4月1日~4月30日)

22年3月の書籍雑誌推定販売金額は1438億円で、前年比6.0%減。 書籍は944億円で、同2.7%減。 雑誌は494億円で、同11.7%減。 雑誌の内訳は月刊誌が419億円で、同12.4%減、週刊誌は75億円で、同7.5%減。 返品率は書籍が23.8%、雑誌は39.3%で、月刊誌は38.9%、週…

古本夜話1264 新日本出版社『プロレタリア詩集』、松永伍一『日本農民詩史』同『農民小学校』

前回、昭和に入ってからのプロレタリア文学書シリーズの刊行リストを挙げ、それらの中に小説だけでなく、年刊日本プロレタリア詩集』『労農詩集第一輯』『ナップ7人詩集』『詩・パンフレット』などの詩も出版されていたことを確認しておいた。これらの年刊ア…

古本夜話1263 昭和プロレタリア文学シリーズとその出版ディケード

日本のプロレタリア文学運動の雑誌の系譜をたどってみると、『近代出版史探索Ⅱ』210の大正十年創刊の『種蒔く人』から始まり、十三年の『文芸戦線』、昭和三年の『戦旗』へとリンクし、多くの作品が発表されていった。それと併走するように、多彩なプロレタ…

古本夜話1262 藤沢桓夫『新雪』と南進論

前回の改造社『プロレタリア文学集』に藤沢桓夫の名前があることは意外に思われたが、「生活の旗」を始めとする七つの短編を読んでみると、彼がこの時代において紛れもないプロレタリア作家だったことを実感した。 藤沢のことは『近代出版史探索Ⅱ』283でふれ…

古本夜話1261 『現代日本文学全集』と『プロレタリア文学集』

これまで見てきたように、昭和円本時代はプロレタリア文学の時代でもあった。しかもそれには他ならぬ円本も寄り添っていたし、時代のトレンドだったというべきであろう。 それをまさに表象しているのは『近代出版史探索Ⅵ』1101の円本の嚆矢としての改造社『…

古本夜話1260 『岡本唐貴自傳的回想画集・岡本唐貴自選画集』

前々回の『戦旗』創刊号に、プロレタリア美術運動に参加していた鈴木賢治が挿画、カット、漫画などを描いていたことを知り、岡本唐貴のことを想起してしまった。実は一年ほど前に、浜松の時代舎で『岡本唐貴自傳的回想画集・岡本唐貴自選画集』を購入してい…

古本夜話1259 山崎斌編『藤村の手紙』と新英社

前回の自然社に関する一文を書いた後で、浜松の時代舎に出かけ、山崎斌絡みの一冊を見つけてしまったのである。やはり続けて書いておくしかない。彼は既述したように、自然社から処女作長篇『二年後』を刊行し、それが前田河広一郎の、これも第一創作集『三…

古本夜話1258 前田河広一郎『三等船客』、自然社、「新人叢書」

『近代出版史探索Ⅳ』783や『同Ⅵ』1061の前田河広一郎は戦旗社「日本プロレタリア作家叢書」には見えていなかったが、本探索1253で挙げておいたように、日本評論社『日本プロレタリア傑作選集』には『セムガ』が収録されていた。それは未見だけれど、大正十一…