出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

出版状況クロニクル163(2021年11月1日~11月30日)

21年10月の書籍雑誌推定販売金額は914億円で、前年比8.7%減。
書籍は514億円で、同4.1%減。
雑誌は399億円で、同14.0%減。
雑誌の内訳は月刊誌332億円で、同13.1%減、週刊誌は67億円で、同18.2%減。
返品率は書籍が32.8%、雑誌は43.9%で、月刊誌は43.4%、週刊誌46.3%。
雑誌のマイナスは大きく、返品率も高く、前年の『鬼滅の刃』の神風的ベストセラーの反動であろう。
だがさらなる問題は1月からの累計が1兆93億円、前年比0.4%減とマイナスに転じたことで、
コロナ巣ごもり需要はもはや見られず、21年の推定販売金額も前年マイナスが確実になったことだ。



1.『新文化』(11/8)が東京調布市の真光書店の矢幡秀治社長、日書連会長にインタビューしているので、それを要約抽出してみる。

* 20年4、5月の売上はコロナ禍の巣ごもり需要などにより、19年に比べ50%増となった。その後も20年はコミックが貢献して微増で推移したが、21年以降は徐々に売上は下がり、10月期は19年比で10%減となっている。
* 今年に入ってからは巣ごもり需要を感じられず、緊急事態宣言が解除され、街には人が戻ってきているが、店の客数は減っている。
* その結論は出ないけれども、商圏内にあるくまざわ書店、パルコブックセンター、TSUTAYAとの競合の影響によるのかもしれない。実際に17年のくまざわ書店出店後、売上は20%落ちた。
*真光書店は1968年創業で、調布駅周辺では最も古い書店である。77年には南口店、2015年には八王子にも出店したが、前者はブックオフの開店、後者は近隣スーパーの閉店で売上が落ちたために撤退している。
* 現在の真光書店は調布パルコがオープンした1989年に竣工した自社ビルに入店している。真光書店ビルは全7階で、1階と地下1階が書店、6階が事務所で、その他の階はマクドナルド、クリニック、学習塾などがテナントとして入っている。
* 書店売場面積は各60坪で、1階が雑誌、一般書、文庫、新書、地下がコミック、学参、理工書で、地元の水木しげるの常設コーナーもあり、また昨年まではパソコン教室も開いていた。
* 書店売上はここ5、6年赤字が続き、不動産経営、役員報酬の削減、外商部門の売上で補填している。従業員は社員、パート、アルバイト25人で、2000年代は35人だった。これ以上の人員削減は店舗運営に支障をきたす。2000年代前半は店売と外商比率が2対1だったが、現在は外商が店売をやや上回っている。
* 外商は閉店した他の書店の取引先を引き継ぎ、手を広げてきた。店舗を維持していることで、図書館や行政施設との関係を保てているし、調布の老舗書店として、店舗運営を止めるつもりはない。


 矢幡社長の率直なレスポンスによって、今世紀に入っての東京近郊の老舗書店の具体的な動向とポジション、現在状況が浮かび上がってくる。
 自店の出店と閉店の繰り返しの中でのさらなる競合店の開店、それに巣ごもり需要とコミックによる疑似回復、しかし21年に入るとそれらも失速し、19年比マイナスに追いやられていることになる。
 救いなのは自社ビルと不動産収益、店売を上回る外商売上であるが、どこまで赤字に耐えられるのか、ここ数年が正念場とも考えられよう。
 真光書店の側から見ると、自社ビルを持たず、テナントで、しかも外商もないとすれば、それこそ書店の「店舗運営」が成り立たないことが歴然となってしまうのである。



2.文教堂GHDは18年に債務超過となり、19年に再建のためのADRが成立し、その計画に基づき、アニメが事業譲渡、保有財産売却、30店の不採算店閉店、希望退職者募集などを経てきた。
 そうした中での2021年8月期決算は売上高187億8200万円、前年比11.8%減、営業利益3億6500万円、同11.8%減の減収減益だが、財務改善がなされつつあると発表。

3.ワンダーグーチェーン48店が楽天BNからトーハンへ帖合変更。

4.大垣書店が広島の廣文館をグループ会社化。

5.CCC=TSUTAYAが名古屋の名鉄百貨店本店に出店。

6.神戸市の三宮ブックスが解散。同社の村田耕平社長は1997年から2003年にかけて、兵庫県書店商業組合理事長を3期務めていたが、21年3月に死去していた。

7.作家の今村翔吾を代表とする株式会社京国(滋賀県大津市)が9月に閉店した大阪市箕面市のきのしたブックセンターを引き継ぎ、11月1日リニューアルオープン。京都のふたば書房のFC店としてである。

8.ノンフィクション作家の田崎健太の(株)カニジルはさきごろ米子市の鳥取大学医学部附属病院内に、小説家の鈴村ふみを店長とする「カニジルブックストア」を開店。
 ノンフィクション、医療、クオリティ・オブ・ライフをテーマとして15坪のセレクトショップで、俵万智や最相葉月などの100人の選書委員が選んだ本を中心とする。店内レイアウトは日販のリノベーション推進部による。

 書店の出店や閉店も含め、まだ他にもあるけれど、10月状況はこのぐらいにとどめておこう。
 に象徴される書店売上動向の中において、これらの事象が起きていることになる。
 からは大手書店の状況だが、2の文教堂に株式市場は反応しておらず、株価はついに60円を割りこんでいる。それは3のワンダーコーポレーションも同様である。
 の大垣書店にしても、『出版状況クロニクルⅥ』で、特別清算と新会社発足にふれた廣文館の傘下に収めるメリットがあるとは考えられない。トーハンの要請による、とりあえずの「囲い込み」と見なすしかない。それは本クロニクル154でふれた5のTSUTAYAのフタバ図書のFC化と酷似している。
 これも紛らわしいが、のふたば書房によるFC化とも通底し、前回の本クロニクルでも、その実例を挙げておいたばかりだ。
 のTSUTAYAだが、近くにある300坪ほどの店舗に12月閉店が告知されていた。すみやの店舗を引き継ぎ、合わせて30年ほど営業していたことになるが、ついに閉店となった。
 雑誌やコミックはともかく、書籍に関してはまったく売れているようではなく、レンタルに支えられていたことは明らかだった。
 しかしネット配信の隆盛を受け、文具や雑貨売場を新設しても、ほとんど効果はなかったと見なせよう。それにすみやを引き継いだテナント契約にしても、日販が介入していた可能性が強いし、この跡地はどうなるのか、それも追跡し、レポートするつもりだ。
 は経営者が亡くなると立ちゆかなくなり、後継者もいないことを浮かび上がらせている。それに負債はどう処理されたのだろうか。
 はこれも前回の本クロニクルで言及した落合博『新聞記者、本屋になる』(光文社新書)のラインにつながる動向で、これからも出版業界関係者によって続いていくだろう。こうした素人による本屋開店をあおった「シロサギ」本屋ライターたち、及び『本の雑誌』(5月号)の特集「本屋がどんどん増えている!」は罪が重いことを自覚すべきだ。

出版状況クロニクルVI: 2018.1~2020.12 新聞記者、本屋になる (光文社新書) 本の雑誌455号2021年5月号

odamitsuo.hatenablog.com



9.『創』(12月号)が特集「街の書店が消えてゆく」を組み、永江朗「とめどなき書店減少と流通再編」、田口久美子「本と書店を生かす道を考えたい」など11本のレポートが掲載されている。

創(つくる)2021年12月号

 『出版状況クロニクルⅥ』で、2019年の岩波書店『世界』(8月号)の特集「出版の未来構想」に関して、そのあまりの不毛な内容にあきれてしまったことを既述しておいた。
 このような『創』の恒例の特集にしても、本クロニクル153などで「床屋談議」にすぎないと批判してきている。
 それは寄稿者たちの出版状況認識の歴史的欠如、思いこみによるバイアス、データの捉え方の錯誤などに起因しているだけでなく、篠田博之編集長自身がそれらのすべを体現しているからに他ならないだろう。
 特集の前ふりとして、「街に書店が一軒もないという地域が拡大していることが何年か前から指摘されてきた。本や雑誌との新たな出会いや発見の機会が失われるという、それは深刻な意味を持っている」と書いている。本当に今さら何をか言わんやである。
 それに加えて、準出版業界誌に位置づけられる『本の雑誌』が本屋が増えていく特集、『創』が書店が消えていくという相反する特集を同じ2021年に組んでいるわけだから、これらも「シロサギ」特集といってかまわないだろう。
f:id:OdaMitsuo:20211123145656j:plain:h110 
 odamitsuo.hatenablog.com



10.『文化通信』(11/16)がビジネス書要約サービスのフライヤーをレポートしているので、ここでも紹介しておこう。
 フライヤーは出版社や著者の許諾を得たビジネス書を10分ほどで読める分量に要約し、ウェブやスマホ上で配信している。月額2200円のゴールドプランだと2600冊が読み放題となる。主な利用者は30~40代で、現在の累計会員数は86万人、法人採用は410社を超えている。
 このフライヤーが選書したビジネス書常設棚がコロナ禍もあって、書店チェーンでも非ロック採用され、877店に及んでいる。フライヤー棚は10冊から100冊が目安で、拡材POP、パネルのデータが提供される。フライヤーが書店と組むのは「ウィンウィンの関係」、及び出版社や著者にとっても「三方よし」の価値を提供したいからだ。
 フライヤー棚を常備しているチェーン書店は未来屋書店が100店、トップカルチャーが68店、ゲオ、三洋堂、明屋書店、金高堂、啓文社、附家書店、平惣である。

 ウェブネット上のビジネス書要約プロジェクトがチェーン書店のビジネス書売場と連携したということになろうか。
 かつてTSUTAYAがバッハと組み、人文書セットを平積みも含め、均一的に全店舗で展開し、大失敗したことを記憶しているが、フライヤー棚はビジネス書のプレゼンテーションとして手軽なので、まだ増えていくように思われる。それが常態化するとビジネス書担当者もいらなくなるだろう。



11.九州の雑誌センターと沖縄県書店商業組合は、九州地区と沖縄組合加盟店のムック返品受け入れと現地で古紙化をスタート。
 164社の出版社が承諾し、21社が協議中とされる。それらの返品は現地で古紙化されるか、古紙化できないムックなどは従来通り、取次の物流拠点に返品される。

 この問題は書店の返品運賃高騰に起因し、『出版状況クロニクルⅥ』でも取り上げ、本クロニクル158でもムックの発行と販売データ、及びムックを主とする枻出版社の民事再生法にもふれておいた。
 しかし164社という多くのムック版元が承諾したということは、ムック自体がもはや返品されても再出荷率も低く、リサイクルなどの二次流通の対象ともならず、多くが断裁されている事実を示しているのかもしれない。
 協議中の21社の実名は挙げられていないが、高定価のムック類に関しては承諾できるはずもない。例えば、平凡社の「別冊太陽」シリーズにしても、現地での古書化は認められないだろうし、他社の同様のムックにしてもしかりであろう。
 それにしても、ここまできてしまえば、次に返品率の高いその他の雑誌、書籍も対象となっていくことも考えらえる。そのことによって、返品ゼロが実現することになったら、まさに出版社にとっての既刊書も、実質的に価値どころか、資産としての意味すらも消滅してしまうだろう。



12.岩波書店は自社の倉庫業を担ってきた後楽園ブックセンターを解散し、それらをポプラ社ロジスティクスへと委託。

 筑摩書房が倉庫用地も売却し、在庫を昭和図書へと委託したように、アウトソーシングへと移行せざるを得ない状況にあるのだろう。
 他の人文書出版社にしても、水面下で同じ状況となっていると伝えられている。



13.KADOKAWAは中国テンセントグループと資本業務提携を結び、その完全子会社Sixjoyを引受先とした第三者割当増資によって、300億円を調達する。
 それは発行済株式総数の6.86%に相当する486万2200株の発行となる。

 楽天のテンセントとの資本業務提携、第三者割当増資と同じスキームであり、それとKADOKAWAの中国、アジア戦略も連動しているように見受けられる。私たちとは金額から無縁であるけれど、その行方はどうなるであろうか。



14.やはり『文化通信』(10/26)にKADOKAWAの代表取締役に就任した夏野剛のインタビューが掲載されている。
 それを要約してみる。

* 昔から角川文庫で慣れ親しんでいるKADOKAWAの社長になれて感慨深く、しかも業績がぐっと上がり始めた時期であったので、僕は幸せ者だ。
* 僕は出版業界のことを全く悲観していない経営者で、テクノロジー系の出身でもあり、KADOKAWAを世界で一番テクノロジーをたくさん使っている出版社にしたいし、グローバルにメディミックスを進めていきたい。
* 英語圏、中国、その他アジア圏の3つのカテゴリーの中で、コミックやライトノベルなどの海外部門を現在の全売上高10%から20%までもっていくのが目標です。
 世界観がしっかりしていて、日本のマーケットで良い反応があれば、海外でも受け入れられる。


 まだ続いているのだが、これで打ち止めにしておきたい。
 前回の本クロニクルで岩波書店の新社長の同じく『文化通信』のインタビューを引いておいた。そして何もいっていないに等しいとのコメントを添えておいたが、夏野の場合もそれが当てはまる。
 『ZAITEN』(11月号、10/1発売)で、ジャーナリスト幅耕平によって実績不明の「炎上男」「チーママ」と批判されたことに対する、内実を伴わない弁明のように受け止められてしまうであろう。
ZAITEN 2016年11月号



15.『週刊読書人』(11/12)が「角川歴彦×高井昌史×野間省伸」の鼎談「いつでも、どこでも、読みたい本を読める社会に」を特集掲載している。

 この鼎談は「日本電子図書館サービス(JDLS)「LibrariE」を中心に」とあるように、図書館向け電子書籍貸出サービスのJDLSが2013年に角川書店、講談社、紀伊國屋書店の提唱によって設立され、電子書籍と図書館の関係の始まりとその後の展開、現在状況が語られている。それにJDLSの二俣富士雄も加わり、大学図書館131館、学校図書館128館、公共図書館223館に及び、現在のLibrariEの電子書籍は7万5000点で、KADOKAWA 1万5000点、講談社6000点と2社で3分の1を占め、出版社はトータルで250社となっていることを伝えている。
 しかしこの鼎談は我田引水的であり、『出版月報』(10月号)の特集「電子図書館の現状と課題」と合わせ読まれるべきだろう。そこに収録された「電子図書館サービスに関する主な歴史」と「公共図書館向け電子貸出サービスの主な商流」チャートは啓蒙的で、とても参考になることを付記しておこう。



16.『朝日新聞』(11/16)が日本の漫画の最大級海賊版サイト「漫画BANK」についての記事を発信している。
 それによれば、アメリカの裁判所が運営者の氏名、住所、アドレスなどを開示するように、グーグルなどに命令を出していることが判明した。
 「漫画BANK」は2019年12月に存在が確認され、今月上旬に閉鎖されたが、『鬼滅の刃』『名探偵コナン』などの人気作品も無料で読め、月間8000万のアクセスがあり、被害額は2082億円に上るとされる。
 集英社、講談社、小学館、KADOKAWAは顧問弁護団と対策を協議し、カリフォルニア州裁判所にグーグルなどへの開示命令を出すように求め、それが12日に出されたが、運営者の拠点は日本国外という可能性もあるようだ。


鬼滅の刃 23 (ジャンプコミックス) 名探偵コナン (100) (少年サンデーコミックス)

 本クロニクル158で、海賊版サイトは多くがベトナムに拠点があること、インターネットにおける自律的分散型システムをコアとしているので、国境を越え、対策を講じても増殖していくのではないかとの観測を示しておいた。
 そのひとつが「漫画BANK」であり、閉鎖に追いやられても、また新たなサイトが出現するであろう。
odamitsuo.hatenablog.com



17.『ビッグコミック』(11/10)が「さいとう・たかを追悼特集」を組、1974年の「ゴルゴ13」シリーズ「海へ向かうエバ」83ページを再録している。

ビッグコミック 2021年 11/10 号 [雑誌] 007 ロシアより愛をこめて アルティメット・エディション [DVD] f:id:OdaMitsuo:20211126115803j:plain:h120

 この追悼特集を読み、あらためて「ゴルゴ13」の起源を考えさせられた。
 1960年代はイアン・フレミングの007ブームの時代であり、ハヤカワミステリや創元社推理文庫とともに、映画もブームとなり、確かさいとうも『ボーイズ・ライフ』で007をマンガ化していたはずだ。
 私もご多聞にもれず、中学生だったが、『ロシアより愛をこめて』を始めとする007の小説と映画に入れこんでいて、それでさいとうのマンガも立ち読みしたのだと思う。007シリーズはエラリー・クィーンやヴァン・ダインなどのミステリーと異なり、スパイ小説という新しいジャンル、世界を開示してくれたし、それはさいとうの劇画にとっても大いなる刺激となったにちがいない。
 ゴルゴ13もその延長線上に誕生し、そこからさいとう番の編集者長崎尚志と浦沢直樹の『MASTERキートン』、浦沢の『MONSTER』、それから私がファンである真刈信二作、赤名修画『勇午』なども派生していったと思われる。
 それらの作品をスピンアウトさせたことも、さいとうの「ゴルゴ13」シリーズの隠れたる功績だったのではないだろうか。
MASTER KEATON / 12 完全版 (ビッグコミックススペシャル) MONSTER: 終わりの風景 (18) (ビッグコミックス) 勇午 22 (アフタヌーンKC)



18.『月刊MOE』(12月号)が「ゴールデンカムイとアイヌの物語」の特集を組み、野田サトルにもインタビューしている。
MOE (モエ) 2021年12月号 [雑誌] (ゴールデンカムイとアイヌの物語 | 絵本ふろく ヨシタケシンスケ「かみはこんなに くちゃくちゃだけど」)

 これは『カムイ伝』の白土三平の死去をうけ、その後継者としての物語である『ゴールデンカムイ』にスポット当てようとする企画とも見なせよう。
 カラーページによる紹介と野田へのインタビューは楽しく読めるし、好特集で、ロングセラーとなっている中川裕『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』(集英社新書)とともに手元に置いておこう。
 17の「ゴルゴ13」ではないけれど、『ゴールデンカムイ』もまた白土の『カムイ伝』を揺籃の地として生み出されてきたのである。まだ23巻までしか読んでいない。続きを読まなくては。
カムイ伝全集 第一部 (15) (ビッグコミックススペシャル) ゴールデンカムイ 27 (ヤングジャンプコミックス) アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」 (集英社新書)



19.映画評論家の西脇英夫が亡くなった。

 私は『読売新聞』の訃報記事で知ったが、他には見ていないので、まだ知られていないのかもしれない。
 西脇は『三一新書の時代』(「出版人に聞く」16)の井家上隆幸の編集で、1976年に東京白川書院から『アウトローの挽歌』を刊行している。
 同書はサブタイトルに「黄昏にB級映画を見てた」とあるように、初めてやくざ映画・任侠映画の総体を「B級映画」として論じた一冊で、その後のノンジャンルのB級物の走りだったと思われる。
 彼はまた東史朗名での漫画原作者で、かわぐちかいじの『牙拳』(日本文芸社)を始めとする多くの作品が残されたことになる。 
三一新書の時代 (出版人に聞く) f:id:OdaMitsuo:20211126135932j:plain:h120 牙拳1 (かわぐちかいじ傑作選)



20.『近代出版史探索Ⅵ』は遅れてしまい、22年の年明けとなるが、表紙カバーは山本芳翠「浦島図」を使うので、ご期待下さい。
f:id:OdaMitsuo:20210108121207j:plain:h110

 論創社HP「本を読む」〈70〉は「ルイ・アラゴン『パリの神話』と『イレーヌ』」です。

ronso.co.jp