出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

出版状況クロニクル143(2020年3月1日~3月31日)

20年2月の書籍雑誌推定販売金額は1162億円で、前年比4.0%減。 書籍は713億円で、同3.2%減。 雑誌は448億円で、同5.2%減。 その内訳は月刊誌が370億円で、同4.6%減、週刊誌は78億円で、同8.2%減。 返品率は書籍が31.8%、雑誌は41.5%で、月刊誌は41.2%、週刊…

古本夜話1009 伊藤整と島崎藤村『飯倉だより』

前回の伊藤整『若い詩人の肖像』の中で、伊藤は昭和三年四月に上京し、北川冬彦と梶井基次郎たちの麻布の飯倉片町にある素人下宿に移り住む。すると北川からその谷底の路地に島崎藤村が住んでいると教えられる。すでに梶井は訪ねていたようだ。 伊藤も実際に…

古本夜話1008 伊藤整、百田宗治『椎の木』、北川冬彦『詩・現実』

前々回、武蔵野書院の『詩・現実』にふれ、そこに伊藤整も辻野久憲、永松定との共訳で、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシイズ』を連載したことを既述しておいた。 その伊藤の長編小説『若い詩人の肖像』(新潮文庫)は自伝であると同時に、大正時代後半の詩人…

古本夜話1007 梶井基次郎、「闇の絵巻」と説教強盗

あらためて梶井基次郎の『檸檬』を初版で、といっても、近代文学館とほるぷ出版の復刻だが、読むことは文庫や文学全集などの場合と異なる読書体験であると実感してしまう。私はかつて「梶井基次郎と京都丸善」(『書店の近代』所収)を書いているので、とり…

古本夜話1006 武蔵野書院とプルースト『スワン家の方』

本連載985の高木敏雄『比較神話学』を復刻した武蔵野書院は、昭和六年にプルーストの『失ひし時を索めて』の第一巻『スワン家の方』を翻訳出版している。手元にそれがあるけれど、この菊判並製の一冊は背がはがれ、表裏双方の表紙も同様、解体寸前の状態…

古本夜話1005 金星堂児童部、武井武雄、島田元麿、東草水訳『青い鳥』

本連載995で、冨山房の「画とお話の本」の一冊、楠山正雄編、岡本帰一画『青い鳥』にふれ、瀬田貞二の『落穂ひろい』での証言を引き、大正九年の民衆座による『青い鳥』初演は「近代演劇史上の一事件」だったことを既述しておいた。 (『青い鳥』)(『落…

古本夜話1004 池田大伍編『支那童話集』と『現代戯曲全集』

前回の一編を書いてから、浜松の時代舎に出かけたところ、本連載994の「模範家庭文庫」の一冊である池田大伍編『支那童話集』を見つけてしまったので、ここで書いておくしかないだろう。 (『支那童話集』) しかも同993の『朝鮮童話集』と異なり、函…

古本夜話1003 弘道閣と『博物辞典』

前回の実質的な培風館の創業者である川村理助の『自由人になるまで』において、気になるエピソードが記されていたので、それに関しても言及してみたい。 明治二十年に森有礼が文部大臣となり、師範教育の改善を経て、東京師範学校を高等師範学校と改め、各府…

古本夜話1002 培風館、山本慶治、川村理助『自由人となるまで』

本連載999の松村武雄の『神話学原論』 を始めとして、彼の著作の大半が戦前戦後を通じて、培風館から刊行されていることを既述しておいた。それは未見であるけれど、同992で挙げた森鴎外、鈴木三重吉、馬淵冷佑とともに編纂した「標準お伽文庫」全六巻…

古本夜話1001 南の会『ニューギニア土俗品図集』

前回のレヴィ=ブリュルの『原始神話学』は主としてニューギニアのマリンド族、ドブ族、マリンド=アニム族などの諸部族と神話をテーマにしていた。 (弘文堂版) そのことで想起されたのは、南洋興発株式会社蒐集『ニューギニア土俗品図集』という一冊である。…

古本夜話1000 J・E・ハリソン『古代芸術と祭式』とレヴィ=ブリュル『原始神話学』

前回松村武雄の『神話学原論』 において、言及頻度が高い著者と著作に、ジェーン・エレン・ハリソンの『テミス―希臘宗教の社会的起原の研究』(Themis : A Study of the Social Origin of Greek Religion)とレヴィ=ブリュルの『原始神話学』がある。(『神…

出版状況クロニクル142(2020年2月1日~2月29日)

20年1月の書籍雑誌推定販売金額は865億円で、前年比0.6%減。 書籍は495億円で、同0.6%増。 雑誌は370億円で、同2.2%減。 その内訳は月刊誌が295億円で、同0.7%減、週刊誌は74億円で、同8.0%減。 返品率は書籍が33.1%、雑誌は45.1%で、月刊誌は46.1%、週刊誌…

古本夜話999 松村武雄『神話学原論』と『民族性と神話』

本連載992は『世界童話大系』と、『神話伝説大系』前史としての松村武雄と山崎光子=水田光のことに終始してしまったので、ここではその後の松村武雄のことにふれてみたい。(『世界童話大系』) (『神話伝説大系』、近代社版) その立項に示されていたよ…

古本夜話998 細谷清『満蒙伝説集』

昭和十年年代になっても、「伝説」の時代はまだ続いていたようで、、『神話伝説大系』に含まれていなかった『満蒙伝説集』が刊行されている。これは著作兼発行者が、発行所は満蒙社、発売所を神田神保町の丸井書店として出され、細谷と満蒙社の住所は同じ小…

古本夜話997 藤澤衛彦と六文館『日本伝説研究』

もう一編、『神話伝説大系』に関して付け加えておく。本連載991でリストアップしたように、この第十三巻は『日本神話伝説集』で、藤澤衛彦によって編まれている。(近代社版) その内容は「神話」が『古事記』『日本書記』『今昔物語』、「伝説」が『日本…

古本夜話996『白樺』、叢文閣、有島生馬訳『回想のセザンヌ』

本連載993で、『朝鮮童話集』の中村亮平が「新しき村」を離村後、朝鮮へ赴き、同書を著わしたこと、洛陽堂から自伝小説を刊行し、それから美術雑誌の編集に携わったことなどを既述しておいた。それに補足すると、拙稿「洛陽堂『泰西の絵画及彫刻』と『白…

古本夜話995 冨山房「画とお話の本」と『大男と一寸法師』

またしても『朝鮮童話集』のことになるが、前回の「模範家庭文庫」の巻末広告に関連して、その姉妹編としての「画とお話の本」の長い紹介がなされていた。そのコアを記せば、「画とお話の本は、小学校以上の児童のため、それゞゝの学年に相当した課外読物に…

古本夜話994 冨山房「模範家庭文庫」と瀬田貞二『落穂ひろい』

前回の中村亮平『朝鮮童話集』が冨山房の「模範家庭文庫」の一冊であることは既述しておいた。この「模範家庭文庫」に関しては拙稿「吉行淳之介と冨山房『世界童謡集』(『古本屋散策』所収)や本連載237でも平田禿木訳『ロビンソン漂流記』で言及してき…

古本夜話993  中村亮平『朝鮮童話集』

『神話伝説大系』第十四巻の『朝鮮神話伝説集』と『台湾神話伝説集』は中村亮平編となっている。中村はその「まえがき」に当たる「朝鮮神話伝説概観」において、朝鮮の「国土そのものが、大陸との人類文化移植の橋梁の役目」を有し、神話伝説の「多くは吾日…

古本夜話992 松村武雄と山崎光子

前回の一大出版プロジェクトと見なしていい『神話伝説大系』の企画と出版が、どのようにして成立したのか、またその翻訳と編集がどのようにしてなされたのかに関しては詳らかでない。それに例えば、朝倉治彦他編『神話伝説辞典』(東京堂、昭和三十八年)な…

古本夜話991 近代社『神話伝説大系』

前々回に中島悦次の証言を引き、昭和二年に恩師の松村武雄の『神話伝説大系』全十八巻が刊行され始め、神話研究にとって恵まれた年だったことにふれておいた。 (近代社版) この近代社の『神話伝説大系』は裸本で函の有無は不明だが、十年以上前に全巻を入…

出版状況クロニクル141(2020年1月1日~1月31日)

19年12月の書籍雑誌推定販売金額は1060億円で、前年比8.9%減。 書籍は509億円で、同13.1%減。 雑誌は550億円で、同4.6%減。 その内訳は月刊誌が470億円で、同4.2%減、週刊誌は80億円で、同6.6%減。 返品率は書籍が32.9%、雑誌は38.8%で、月刊誌は38.1%、週刊…

古本夜話990 西村眞次『人類学汎論』と『世界古代文化史』

前回の西村眞次に関して続けてみる。彼は『新潮社四十年』において、新声社同人の西村酔夢として紹介され、明治三十四年に『日本情史』を刊行し、「花井卓蔵博士をして学位論文の価値あり」と激賞されたという。またこれも未見だが、正続『美辞宝典』(文武…

古本夜話989 西村眞次『神話学概論』

中島悦次の『神話と神話学』の初版に当たる『神話』(共立社)の刊行と同じく昭和二年に、西村眞次の『神話学概論』が早稲田大学出版部から出されている。『早稲田大学出版部100年小史』によれば、同書亜はやはり同年刊行の「文化科学叢書」全8巻のうちの第4…

古本夜話988 中島悦次『神話と神話学』

拙稿「青蛙房と『シリーズ大正っ子』」(『古本探究Ⅱ』所収)や本連載429で、大東出版社の「大東名著選」にふれ、これが戦後に青蛙房を興す岡本経一の編集によるものであることを既述しておいた。その「大東名著選」37として、昭和十七年に中島悦次の『神…

古本夜話987 Favorite Andrew Lang Fairy Tale Books in many colorsと東京創元社『ラング世界童話全集』

前回のアンドルー・ラングの民俗学や神話学の原著は入手していないけれど、『童話集』のほうは原書と翻訳の双方が手元にあるばかりでなく、これも『世界名著大事典』に『童話集』として立項されている。同じ『童話集』の立項にはアンデルセン、オーノワ夫人…

古本夜話986 アンドルー・ラング『神話、祭式、宗教』

前回既述しておいたように、高木敏雄の『比較神話学』は十九世紀のヨーロッパの神話学の成果を参照して書かれているだが、その研究者名は多く挙げられているにもかかわらず、具体的な書名はほとんど挙げられていない。とりわけ高木はアンドリュー・ラングの…

古本夜話985 高木敏雄『比較神話学』と武蔵野書院

前回、高木敏雄の『日本神話伝説の研究 神話・伝説編』の「序」は柳田国男が寄せていることを既述したが、そこには「比較神話学が高木君最初の力作であり日本伝説集が明治末葉の大蒐集であつて、共に最近に覆刻せられた」という一節が見えていた。『日本伝説…

古本夜話984『郷土研究』と高木敏雄『日本神話伝説の研究』

続けてサンカをめぐってきたが、その発端ともいえる柳田国の「『イタカ』及び『サンカ』」(『柳田国男全集』5 所収、ちくま文庫)が発表された時代に戻ってみる。 大正二年に柳田国男は神話学者の高木敏雄とともに、本格的な民俗研究雑誌『郷土研究』を創刊…

古本夜話983 田山花袋「帰国」と『サンカの民を追って』

本連載484の『現代ユウモア全集』第2巻に堺利彦の『桜の国・地震の国』があり、そこに「山窩の夢」という一文が収録され、田山花袋がサンカ小説「帰国」を書いていることを知った。この短編はこれも本連載262の『花袋全集』第七巻所収だとわかったので…