出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

古本夜話722 尾崎士郎『成吉思汗』

前回、戦後に井上靖や司馬遼太郎が西域小説を書いていたことにふれたが、それは彼らだけでなく、大東亜戦争下においてはいくつもの作品が発表されたと考えられる。その典型としての尾崎士郎『成吉思汗』が手元にある。これも例によって、浜松の時代舎で購入…

古本夜話721 フレミング『ダッタン通信』とスミグノフ『コンロン紀行』

昭和三十年代末の『ヘディン中央アジア探検紀行全集』全十一巻に続いて、四十年代に入り、同じ白水社から『西域探検紀行全集』全十六巻が刊行された。後者は監修を深田久弥、本連載716の江上波夫、協力を長沢和俊とするもので、推薦文というべき「刊行に…

古本夜話720 大日本回教協会、照文閣『回教民族運動史』、川原久仁於

前回、善隣協会の名前を挙げたが、本連載577の回教圏研究所もここに属していたのである。この回教圏研究所とは異なるかたちで、東京モスクが開堂された昭和十三年に、続いて大日本回教協会も設立され、これは前首相、陸軍大将林銑十郎を会長とし、評議員…

古本夜話719 蒙古善隣協会と西北研究所

前々回の小川晴暘の『大同の石仏』に、蒙古旅行に関して善隣協会や京都の東方文化研究所への謝意があることにふれた。だが前回の『蒙古高原横断記』においては、その探検が小川に先駆ける昭和六年と十年だったので、蒙古の張家口から出発しているにもかかわ…

古本夜話718 江上波夫と東亜考古学会蒙古調査班『蒙古高原横断記』

本連載357の『瓜哇の古代芸術』や前回の『大同の石仏』ではないけれど、昭和十年代から、「東亜」に関する図版写真入りの報告書や研究などが多く出されていくようになる。そのような一冊が、これも本連載706の日光書院から、昭和十六年に刊行されてい…

古本夜話717 小川晴暘『大同の石仏』と「アルス文化叢書」

前回の「ナチス叢書」と同時期に、やはりアルスから「アルス文化叢書」が出されている。これはB6判、多くのアート刷写真の収録が特色のシリーズで、定価が「ナチス叢書」」の六十銭に対して、一円二十銭なのはそれゆえだ。実際に手元にある『大同の石仏』も…

出版状況クロニクル114(2017年10月1日~10月31日)

17年9月の書籍雑誌の推定販売金額は1284億円で、前年比6.5%減。 書籍は720億円で、同0.5%増となり、4ヵ月ぶりに前年を上回った。 文庫本の大物新刊の刊行などによる底上げとされるが、書店実売の書籍は1%減。 雑誌は564億円で、同14.2%減。その内訳は月刊誌…

古本夜話716 高嶋辰彦『皇戦』

藤沢親雄、スメラ学塾、「ナチス叢書」と続けてきたので、ここで本連載130でその名前を挙げている高嶋辰彦のことも書いておきたい。 その前に昭和二十六年刊行の木下半治編『現代ナショナリズム辞典』(学生文庫、酣燈社)の中に、高嶋の名前も見えるスメ…

古本夜話715 八條隆孟『ナチス政治論』と「ナチス叢書」

続けてもう一編、藤沢親雄絡みのシリーズのことも書いておきたい。それは本連載127でふれているアルスの「ナチス叢書」に関してで、その際には未見だった「同叢書」の一冊を入手したからだ。その一冊は昭和十六年刊行の八條隆孟の『ナチス政治論』である…

古本夜話714 東洋図書と藤沢親雄『全体主義と皇道』

本連載709の「国民精神文化類輯」の4『自由主義の批判』の著者は藤沢親雄だった。藤沢については本連載113、124などで、そのプロフィルを紹介しておいたが、その後昭和十五年に東洋図書から刊行された『全体主義と皇道』を入手している。その藤沢の…

古本夜話713 大日本産業報国会、「産報理論叢書」、難波田春夫『日本的勤労観』

前々回の国民精神文化研究所の「国民精神文化類輯」と類似するシリーズが昭和十七年に刊行されている。それは大日本産業報国会の「産報理論叢書」で、その第一輯の難波田春夫『日本的勤労観』を入手している。難波田が本連載706の「現代哲学叢書」の著者…

古本夜話712 紀平正美『哲学概論』と岩波書店「哲学叢書」

本連載706で、紀平正美が朝倉書店の「現代哲学叢書」の推薦者の一人だったことに加えて、前回も紀平が国民精神文化研究所員であり、「国民精神文化類輯」の1『我が青年諸兄に告ぐ』の著者だったことを既述しておいた。これはふれなかったけれど、「現代哲…

古本夜話711 精神文化研究所と「国民精神文化類輯」

実は前回の河野省三の小冊子的な一冊も入手している。それは『我が国の神話』で、「国民精神文化類輯」の第三輯として、昭和十一年に国民精神文化研究所から刊行されている。奥付には「発売元」が国民精神文化研究会、「売捌元」は目黒書店とある。これは実…

古本夜話710 河野省三『すめら せかい』

前回の鹿子木員信『すめら あじあ』の発行者を宇野橘とする同文書院に関して、そのプロフィルをつかめていないのだが、その巻末の十二冊の文学博士の肩書がついて刊行図書からすれば、人文系アカデミズム出版社と見なせるだろう。また戦後も実用書出版社とし…

古本夜話709 鹿子木員信『すめら あじあ』

前回の朝倉書店の「現代哲学叢書」の推薦者の一人として、鹿子木員信の名前を挙げておいたが、彼は『現代日本朝日人物事典』に立項されているので、まずはそれを引く。 鹿子木員信1884・11・3~1949・12・23/かのこぎ・かずのぶ 思想家。東京都生まれ。1904…

古本夜話708 朝倉書店、「現代哲学叢書」、斎藤晌

大東亜戦争下においては出版社も総動員体制となり、それは哲学の分野にも及んでいった。その典型を朝倉書店の「現代哲学叢書」にも見ることができる。朝倉書店は同文館出身の朝倉鑛造によって昭和四年に創業された賢文館の後身で、教育書や農業書の出版から…

古本夜話707 「アジア内陸叢刊」と三橋富治男訳『トウルケスタン』

前回の『東亜学』の中に、生活社の鄧雲徳『支那救荒史』(川崎正雄訳、昭和十四年)の書評が掲載されていたことを既述しておいた。生活社に関しては本連載131で創業者と設立事情、同578で雑誌『東亜問題』を刊行したことに言及しているが、「アジア内…

出版状況クロニクル113(2017年9月1日~9月30日)

17年8月の書籍雑誌の推定販売金額は976億円で、前年比6.3%減。 書籍は464億円で、同3.7%減、雑誌は511億円で、同8.6%減。 雑誌の内訳は月刊誌が419億円で、同6.9%減、週刊誌は92億円で、同15.7%減。 返品率は書籍が42.2%、雑誌は44.4%で、月刊誌は45.3%、週…

古本夜話706 『東亜学』、日光書院、米林富男

大東出版社の「東亜文化叢書」、彰国社、龍吟社の「東亜建築撰書」と続けてきたので、もうひとつ日光書院の『東亜学』にもふれてみたい。 これは昭和十四年九月に第一輯が出され、裏表紙には『ORIENTALICA』とあり、英文目次も付されている。その後、同十九…

古本夜話705 島村抱月『文芸百科全書』と隆文館

前回久し振りに草村北星の龍吟社にふれたので、これも本連載151などで言及している北星が以前に設立した隆文館の書物に関する一編を挿入しておきたい。 これは本連載71でも既述していることだが、かつて「『世界文芸大辞典』の価値」(「古本屋散策」4…

古本夜話704 藤岡通夫『アンコール・ワット』と「東亜建築撰書」

本連載680で、農業書の養賢堂も南洋関連書を刊行していることにふれたが、それは建築書の分野にあっても同様で、彰国社からも「東亜建築撰書」が出されている。 この「撰書」に関しては本連載158「龍吟社と彰国社」で言及し、彰国社が戦時下の企業整備…

古本夜話703 井東憲『南洋の民族と文化』と「東亜文化叢書」

大東出版社は前々回の東亜協会との関係の他に、「東亜文化叢書」というシリーズも刊行している。国会図書館を調べると、九冊刊行されているが、昭和十六年十月時点で、四冊までは出版されている。それらを挙げてみる。 1. 実藤恵秀 『近代日支文化論』 2. 井…

古本夜話702 二宮尊徳偉業宣揚会と『二宮尊徳全集』

前回、『東亜連盟』の発売所が育生社で、その住所が『要説二宮尊徳新撰集』の二宮尊徳翁全集刊行会と同じであることから、両社は同じではないかとの推測を述べておいた。 そこで『二宮尊徳全集』の戦前における出版を、書誌研究懇話会編『全集叢書総覧新訂版…

古本夜話701 『東亜連盟』と育生社

前回の東亜協会が北支事変と同時に創立された華北協会の後身で改称されたこと、また同時期に、石原莞爾や宮崎正義たちによって思想運動団体としての東亜連盟が結成されたことを既述しておいた。 東亜連盟は『日本近現代史辞典』に立項されているので、それを…

古本夜話700 東亜協会編著『北支那総覧』

前回岩野夫妻の大東出版社にふれたこともあり、この版元の仏教書以外の書籍も取り上げておきたい。 まずは東亜協会編著『北支那総覧』で、昭和十三年の刊行である。菊判上製五〇五ページ、入手したのは裸本だが、定価が参円八拾銭とされていることからすれば…

古本夜話699 仏教経典叢書刊行会と立川雷平

もう一冊、大正時代の仏教書が残されているので、これもここで書いておこう。それは『現代意訳維摩経解深密教』である。同書は 著訳者を岩野真雄とし、仏教経典叢書刊行会から出版されている。 本連載513で『維摩経』については既述しておいたが、同じく…

古本夜話698 『岩波哲学小辞典』、伊藤吉之助、仲小路彰

前回の仲小路彰のことだが、『砂漠の光』をきっかけにして、出版の世界に足を踏み入れたようで、その痕跡を残している一冊がある。それは岩波書店の四六判『岩波哲学小辞典』に他ならない。これは昭和五年に初版、十三年に増訂版が出され、戦後に至るまでの…

古本夜話697 仲小路彰『砂漠の光』

これはその出版経緯と事情もまったくつかめていないけれど、やはり新光社から大正十一年に仲小路彰の長篇戯曲『砂漠の光』が刊行されている。それは七八一ページに及ぶもので、まさに個人としては前例を見ない長篇戯曲の出版だったと思われる。しかも奥付の…

古本夜話696 三井晶史『法然』

新光社のことは本連載171、172、173などで言及してきたし、同642でも経営者の仲摩照久についてはその経歴などを提出しておいた。だがその出版物に関しては全貌がつかめていない。 とりわけ出版物は雑誌の他に三百余点に及んでいるとされるけれど…

出版状況クロニクル112(2017年8月1日〜8月31日)

17年7月の書籍雑誌の推定販売金額は952億円で、前年比10.9%減。 書籍は467億円で、同6.2%減、雑誌は484億円で、同15.0%減。 雑誌の内訳は月刊誌が382億円で、同17.1%減、週刊誌は102億円で、同6.1%減。 返品率は書籍が42.0%、雑誌は46.2%で、月刊誌は47.8%、…