出版・読書メモランダム

出版と近代出版文化史をめぐるブログ

古本夜話

古本夜話1001 南の会『ニューギニア土俗品図集』

前回のレヴィ=ブリュルの『原始神話学』は主としてニューギニアのマリンド族、ドブ族、マリンド=アニム族などの諸部族と神話をテーマにしていた。 (弘文堂版) そのことで想起されたのは、南洋興発株式会社蒐集『ニューギニア土俗品図集』という一冊である。…

古本夜話1000 J・E・ハリソン『古代芸術と祭式』とレヴィ=ブリュル『原始神話学』

前回松村武雄の『神話学原論』 において、言及頻度が高い著者と著作に、ジェーン・エレン・ハリソンの『テミス―希臘宗教の社会的起原の研究』(Themis : A Study of the Social Origin of Greek Religion)とレヴィ=ブリュルの『原始神話学』がある。(『神…

古本夜話999 松村武雄『神話学原論』と『民族性と神話』

本連載992は『世界童話大系』と、『神話伝説大系』前史としての松村武雄と山崎光子=水田光のことに終始してしまったので、ここではその後の松村武雄のことにふれてみたい。(『世界童話大系』) (『神話伝説大系』、近代社版) その立項に示されていたよ…

古本夜話998 細谷清『満蒙伝説集』

昭和十年年代になっても、「伝説」の時代はまだ続いていたようで、、『神話伝説大系』に含まれていなかった『満蒙伝説集』が刊行されている。これは著作兼発行者が、発行所は満蒙社、発売所を神田神保町の丸井書店として出され、細谷と満蒙社の住所は同じ小…

古本夜話997 藤澤衛彦と六文館『日本伝説研究』

もう一編、『神話伝説大系』に関して付け加えておく。本連載991でリストアップしたように、この第十三巻は『日本神話伝説集』で、藤澤衛彦によって編まれている。(近代社版) その内容は「神話」が『古事記』『日本書記』『今昔物語』、「伝説」が『日本…

古本夜話996『白樺』、叢文閣、有島生馬訳『回想のセザンヌ』

本連載993で、『朝鮮童話集』の中村亮平が「新しき村」を離村後、朝鮮へ赴き、同書を著わしたこと、洛陽堂から自伝小説を刊行し、それから美術雑誌の編集に携わったことなどを既述しておいた。それに補足すると、拙稿「洛陽堂『泰西の絵画及彫刻』と『白…

古本夜話995 冨山房「画とお話の本」と『大男と一寸法師』

またしても『朝鮮童話集』のことになるが、前回の「模範家庭文庫」の巻末広告に関連して、その姉妹編としての「画とお話の本」の長い紹介がなされていた。そのコアを記せば、「画とお話の本は、小学校以上の児童のため、それゞゝの学年に相当した課外読物に…

古本夜話994 冨山房「模範家庭文庫」と瀬田貞二『落穂ひろい』

前回の中村亮平『朝鮮童話集』が冨山房の「模範家庭文庫」の一冊であることは既述しておいた。この「模範家庭文庫」に関しては拙稿「吉行淳之介と冨山房『世界童謡集』(『古本屋散策』所収)や本連載237でも平田禿木訳『ロビンソン漂流記』で言及してき…

古本夜話993  中村亮平『朝鮮童話集』

『神話伝説大系』第十四巻の『朝鮮神話伝説集』と『台湾神話伝説集』は中村亮平編となっている。中村はその「まえがき」に当たる「朝鮮神話伝説概観」において、朝鮮の「国土そのものが、大陸との人類文化移植の橋梁の役目」を有し、神話伝説の「多くは吾日…

古本夜話992 松村武雄と山崎光子

前回の一大出版プロジェクトと見なしていい『神話伝説大系』の企画と出版が、どのようにして成立したのか、またその翻訳と編集がどのようにしてなされたのかに関しては詳らかでない。それに例えば、朝倉治彦他編『神話伝説辞典』(東京堂、昭和三十八年)な…

古本夜話991 近代社『神話伝説大系』

前々回に中島悦次の証言を引き、昭和二年に恩師の松村武雄の『神話伝説大系』全十八巻が刊行され始め、神話研究にとって恵まれた年だったことにふれておいた。 (近代社版) この近代社の『神話伝説大系』は裸本で函の有無は不明だが、十年以上前に全巻を入…

古本夜話990 西村眞次『人類学汎論』と『世界古代文化史』

前回の西村眞次に関して続けてみる。彼は『新潮社四十年』において、新声社同人の西村酔夢として紹介され、明治三十四年に『日本情史』を刊行し、「花井卓蔵博士をして学位論文の価値あり」と激賞されたという。またこれも未見だが、正続『美辞宝典』(文武…

古本夜話989 西村眞次『神話学概論』

中島悦次の『神話と神話学』の初版に当たる『神話』(共立社)の刊行と同じく昭和二年に、西村眞次の『神話学概論』が早稲田大学出版部から出されている。『早稲田大学出版部100年小史』によれば、同書亜はやはり同年刊行の「文化科学叢書」全8巻のうちの第4…

古本夜話988 中島悦次『神話と神話学』

拙稿「青蛙房と『シリーズ大正っ子』」(『古本探究Ⅱ』所収)や本連載429で、大東出版社の「大東名著選」にふれ、これが戦後に青蛙房を興す岡本経一の編集によるものであることを既述しておいた。その「大東名著選」37として、昭和十七年に中島悦次の『神…

古本夜話987 Favorite Andrew Lang Fairy Tale Books in many colorsと東京創元社『ラング世界童話全集』

前回のアンドルー・ラングの民俗学や神話学の原著は入手していないけれど、『童話集』のほうは原書と翻訳の双方が手元にあるばかりでなく、これも『世界名著大事典』に『童話集』として立項されている。同じ『童話集』の立項にはアンデルセン、オーノワ夫人…

古本夜話986 アンドルー・ラング『神話、祭式、宗教』

前回既述しておいたように、高木敏雄の『比較神話学』は十九世紀のヨーロッパの神話学の成果を参照して書かれているだが、その研究者名は多く挙げられているにもかかわらず、具体的な書名はほとんど挙げられていない。とりわけ高木はアンドリュー・ラングの…

古本夜話985 高木敏雄『比較神話学』と武蔵野書院

前回、高木敏雄の『日本神話伝説の研究 神話・伝説編』の「序」は柳田国男が寄せていることを既述したが、そこには「比較神話学が高木君最初の力作であり日本伝説集が明治末葉の大蒐集であつて、共に最近に覆刻せられた」という一節が見えていた。『日本伝説…

古本夜話984『郷土研究』と高木敏雄『日本神話伝説の研究』

続けてサンカをめぐってきたが、その発端ともいえる柳田国の「『イタカ』及び『サンカ』」(『柳田国男全集』5 所収、ちくま文庫)が発表された時代に戻ってみる。 大正二年に柳田国男は神話学者の高木敏雄とともに、本格的な民俗研究雑誌『郷土研究』を創刊…

古本夜話983 田山花袋「帰国」と『サンカの民を追って』

本連載484の『現代ユウモア全集』第2巻に堺利彦の『桜の国・地震の国』があり、そこに「山窩の夢」という一文が収録され、田山花袋がサンカ小説「帰国」を書いていることを知った。この短編はこれも本連載262の『花袋全集』第七巻所収だとわかったので…

古本夜話982 夢野久作「骸骨の黒穂」

菊池寛と三角寛、『オール読物』とサンカ小説の関係からすれば、やはり昭和九年に『オール読物』に掲載された夢野久作の「骸骨の黒穂(くろんぼ)」にふれないわけにはいかないだろう。実はこの作品もサンカをテーマとしているからである。(「骸骨の黒穂」、…

古本夜話981 菊池寛、平凡社『明治大正実話全集』、永松浅造

三角寛の最初のサンカ小説「山窩お良」は昭和七年に新潮社から刊行された『昭和妖婦伝』に収録され、作品の異同はあるけれど、同タイトルで現代書館の『三角寛サンカ選集』第九巻として復刊されている。 その「序」は菊池寛、加藤武雄、藤沼庄平の三人が書い…

古本夜話980 椋鳩十『鷲の唄』

既述したように、前回の三角寛がサンカ小説「山窩お良」を発表したのは昭和七年だったが、ほぼ同時期に椋鳩十がやはり山窩小説を書いていた。椋に関しても、『日本近代文学大事典』の立項の前半を引いてみる。 椋鳩十 むくはとじゅう 明治三八・一・二二~昭…

古本夜話979 三角寛とサンカ小説

本連載974の「山窩」の補注のようなものを何回か書いてみたい。 「サンカ」という言葉を知ったのは昭和三十年代後半の中学時代だった。テレビで連続時代劇『三匹の侍』が放映されていて、谷川で女性が半裸になり、背中を見せるシーンがあった。現在では何…

古本夜話978 和歌森太郎『修験道史研究』

前回、堀一郎との関係から、和歌森太郎が『民間伝承』に寄稿するようになり、昭和二十四年には編集委員、二十六年から翌年十二月号の終刊まで、編集兼発行者を務めていたことを既述しておいた。 だがそれらについて、『[現代日本]朝日人物事典』の和歌森太…

古本夜話977『民間伝承』、堀一郎、和歌森太郎

前回は『民間伝承』の戦時下における流通販売の六人社と生活社への委託、及び戦後の六人社との再びのコラボレーションをたどってきたが、編集兼発行人に関しては守随一と橋浦泰雄にふれただけだった。 守随も木曜会同人で、東大新人会のメンバーだった。しか…

古本夜話976『民間伝承』の流通と販売

前回の柳田国男篇『海村生活の研究』が、民間伝承の会の後身である日本民俗学会から、昭和二十四年に刊行されたことを既述しておいた。姉妹篇ともいえる『山村生活の研究』は戦前の十二年に民間伝承の会から出されている。大東亜戦争と敗戦をはさんでいるけ…

古本夜話975 日本民俗学会『海村生活の研究』と戦後の柳田国男

前回の後藤興善の『又鬼と山窩』に収録されている「豊後水道への旅」と「萬弘寺の市」は、昭和十二年に柳田国男の木曜会メンバーを中心とする全国海村調査に対し、日本学術振興会の補助金が出されたことで実現した記録である。また「恠音・恠人」「神仏の恩…

古本夜話974 後藤興善『又鬼と山窩』

ジェネップ『民俗学入門』の訳者、柳田国男『民間伝承論』の講義筆記者兼構成者としての後藤興善に続けてふれてきた。だがその後藤のプロフィルは明確につかめず、『柳田国男伝』の記述からたどってみると、明治三十三年兵庫県生まれ、国文学専攻で、昭和八…

古本夜話973 柳田国男『民間伝承論』、共立社『現代史学大系』、後藤興善

バーンの『民俗学概論』やジェネップの『民俗学入門』の翻訳出版は、柳田国男にとっても自らの手で概論書をという意欲を駆り立てたにちがいない。それは昭和九年に『民間伝承論』として結実し、日本民俗学の立場を規定し、『柳田国男伝』にしたがえば、「日…

古本夜話972 ジェネップ『民俗学入門』

本連載936のバーンの岡正雄訳『民俗学概論』に続いてとは言えないけれど、その五年後の昭和七年にヴァン・ジェネップの後藤興善訳『民俗学入門』が、郷土研究社から刊行されている。 その第一章は「フォークロアの歴史」と題され、次のように始まっている…