2022-01-01から1年間の記事一覧
22年3月の書籍雑誌推定販売金額は1438億円で、前年比6.0%減。 書籍は944億円で、同2.7%減。 雑誌は494億円で、同11.7%減。 雑誌の内訳は月刊誌が419億円で、同12.4%減、週刊誌は75億円で、同7.5%減。 返品率は書籍が23.8%、雑誌は39.3%で、月刊誌は38.9%、週…
前回、昭和に入ってからのプロレタリア文学書シリーズの刊行リストを挙げ、それらの中に小説だけでなく、年刊日本プロレタリア詩集』『労農詩集第一輯』『ナップ7人詩集』『詩・パンフレット』などの詩も出版されていたことを確認しておいた。これらの年刊ア…
日本のプロレタリア文学運動の雑誌の系譜をたどってみると、『近代出版史探索Ⅱ』210の大正十年創刊の『種蒔く人』から始まり、十三年の『文芸戦線』、昭和三年の『戦旗』へとリンクし、多くの作品が発表されていった。それと併走するように、多彩なプロレタ…
前回の改造社『プロレタリア文学集』に藤沢桓夫の名前があることは意外に思われたが、「生活の旗」を始めとする七つの短編を読んでみると、彼がこの時代において紛れもないプロレタリア作家だったことを実感した。 藤沢のことは『近代出版史探索Ⅱ』283でふれ…
これまで見てきたように、昭和円本時代はプロレタリア文学の時代でもあった。しかもそれには他ならぬ円本も寄り添っていたし、時代のトレンドだったというべきであろう。 それをまさに表象しているのは『近代出版史探索Ⅵ』1101の円本の嚆矢としての改造社『…
前々回の『戦旗』創刊号に、プロレタリア美術運動に参加していた鈴木賢治が挿画、カット、漫画などを描いていたことを知り、岡本唐貴のことを想起してしまった。実は一年ほど前に、浜松の時代舎で『岡本唐貴自傳的回想画集・岡本唐貴自選画集』を購入してい…
前回の自然社に関する一文を書いた後で、浜松の時代舎に出かけ、山崎斌絡みの一冊を見つけてしまったのである。やはり続けて書いておくしかない。彼は既述したように、自然社から処女作長篇『二年後』を刊行し、それが前田河広一郎の、これも第一創作集『三…
『近代出版史探索Ⅳ』783や『同Ⅵ』1061の前田河広一郎は戦旗社「日本プロレタリア作家叢書」には見えていなかったが、本探索1253で挙げておいたように、日本評論社『日本プロレタリア傑作選集』には『セムガ』が収録されていた。それは未見だけれど、大正十一…
本探索1253で戦旗社の出版流通と販売に関して、『近代出版史探索Ⅲ』645で既述していることにふれたが、それは「総合ヂャーナリズム講座」における壺井繁治の証言をベースにしている。『日本近代文学大事典』の『戦旗』の解題においても、それらは言及されて…
続けて戦旗社の「日本プロレタリア作家叢書」の徳永直『太陽のない街』、小林多喜二『蟹工船』を取り上げてきたが、両者が連載された『戦旗』創刊号が手元にある。それは本連載1251の新潮社『トルストイ研究』と同じく、近代文学館編集の講談社「復刻 日本の…
前回の徳永直『太陽のない街』が戦旗社の「日本プロレタリア作家叢書」の一冊であることは既述しておいたが、それらの明細は示さなかったので、ここで挙げてみる。 1 藤森成吉 『光と闇』 2 小林多喜二 『蟹工船』/改訂版『蟹工船』 3 山田清三郎 『五月祭…
徳永直『太陽のない街』の戦旗社版は架蔵している。もちろんそれは昭和四年の初版ではなく、近代文学館からの複刻である。戦旗社の「日本プロレタリア作家叢書」にふさわしい装幀は、柳瀬正夢によるハンマーを振ろうとする労働者の姿を描いたもので、目黒生…
22年2月の書籍雑誌推定販売金額は1079億円で、前年比10.3%減。 書籍は677億円で、同5.7%減。 雑誌は402億円で、同17.0%減。 雑誌の内訳は月刊誌が335億円で、同18.8%減、週刊誌は67億円で、同6.4%減。 返品率は書籍が29.5%、雑誌は39.8%で、月刊誌は38.9%、…
本探索1248の山内封介『レーニン』と一緒に、やはり浜松の時代舎で、徳永直の『能率委員会』を入手している。これは昭和五年に日本評論社から刊行された『日本プロレタリア傑作選集』の一冊で、文庫版を一回り大きくした判型の並製である。奥付には定価三十…
本探索1247でふれた数次に及ぶトルストイブームはともかく、その立役者ともいえる徳富蘆花の明治時代におけるベストセラー作家としての人気に関しては、私などの昭和の戦後世代にとって、実感を伴うことは難しい。それに現在でも岩波文庫で読めるにしても、…
本探索1247で、新潮社の雑誌『トルストイ研究』を挙げたが、幸いなことにこの第一号は近代文学館編集によって講談社が昭和五十七年に刊行した「複刻 日本の雑誌」の一冊に含まれ、近年それを入手しているので、ここで取り上げておこう。 (『トルストイ研究…
『金星堂の百年』が出されたことは近代出版史や文学史にとって幸いだったが、全出版目録が収録されていないのは残念の一言に尽きる。それは金星堂の戦前の出版物の収集が困難であることを象徴していよう。紅野敏郎にしても『大正期の文芸叢書』(雄松堂出版…
『金星堂の百年』において、「編集部員は文学青年、文学少女」という見出しで、本探索1238の松山敏だけでなく、当時の他の編集者についてもふれられ、次のように記されていた。 のちに作家となり戦後は「肉体派の風俗作家」などと呼ばれた池田みち子も、常勤…
前回の近代出版社に関して、もう一編書いておきたい。 その前に山内封介というロシア文学者にふれてみる。彼はやはり前回挙げた新潮社の「トルストイ叢書」の『贋造手形』、及びゴンチャロフ『オブローモフ』の訳者だが、昭和に入ってからは新潮社の訳者とし…
もう一編、新潮社と演劇絡みの話を続けたい。佐藤義亮は「出版おもひ出話」において、大正三年に島村抱月が松井須磨子と芸術座を立ち上げ、帝国劇場でトルストイの『復活』を旗揚げ興業した際のエピソードを記している。 それによれば、『復活』の舞台稽古が…
新潮社の「現代脚本叢書」は『近代出版史探索Ⅱ』205で、金子洋文の『投げ棄てられた指輪』を取り上げておいた。その際にはこの「叢書」のラインナップを示さなかったこと、及び谷崎潤一郎の『法成寺物語』を入手したこともあり、もう一度ふれてみる。その前…
前回の『代表的名作選集』と「新進作家叢書」のラインナップをあらためて通覧し、大正時代における新潮社のこのふたつのシリーズが、大正文学の確立と広範な普及において大きな役割を果たし、影響を与えたことを実感した。だから続けて「新進作家叢書」にも…
例によって浜松の時代舎で、もう一冊、里見弴の『善心悪心』を見つけ、購入してきた。これは前回の「感想小品叢書」に先駆ける新潮社の『代表的名作選集』の35として、大正九年に刊行されたものである。(『善心悪心』、新潮社)(「感想小品叢書」) 新潮社…
新潮社の「感想小品叢書」に関しては『近代出版史探索』176で、菊池寛『わが文芸陣』と中村武羅夫『文壇随筆』にふれておいたが、その後、里見弴『白酔亭漫記』も入手している。(『わが文芸陣』)(『白酔亭漫記』) その巻末リストには「文壇諸家の主張と…
22年1月の書籍雑誌推定販売金額は853億円で、前年比4.8%減。 書籍は510億円で、同0.9増。 雑誌は343億円で、同12.3%減。 雑誌の内訳は月刊誌が275億円で、同14.4%減、週刊誌は67億円で、同2.3%減。 返品率は書籍が30.2%、雑誌は43.3%で、月刊誌は43.8%、週刊…
しばらく間があいてしまったが、ここで新潮社に戻る。本探索1203の「海外文学新選」と併走するように、新潮社から「中篇小説叢書」が刊行されていた。同じく四六判並製、一六〇ページのフォーマットだが、装幀は佐藤春夫によるとされる。この「叢書」は次の…
『近代出版史探索Ⅵ』1198で廣文堂書店を取り上げ、この版元が大正時代前半には小中村清矩遺著『有聲録』や黒岩周六『実行論』などの多くの「クロース綴函入頗美本」を刊行していたが、譲受出版と見なされるかたちで、石川文栄堂へと版権が移ったことを既述し…
本探索1209の「袖珍世界文学叢書」を刊行した中央出版社に関して、新たな発見があったので、それを書き留めておきたい。 浜松の典昭堂で、背文字も定かならぬ一冊の裸本を目にした。何気なく手にしてみると、それは中央出版社から出された、日下敞道『加持祈…
本探索1208の西牧保雄訳『女優ナナ』と同1218の堺利彦訳『哀史梗概』に絡んでの話だが、ユーゴー原著、松山敏訳『レ・ミゼラブル(噫無情)』を入手している。これは大正十年に著訳者を松山として、神田区錦町の木村愛治郎を発行者とする愛文閣から刊行され…
佐藤春夫の『李太白』という短編集がある。大正十三年に発行者を面家荘佶とする赤坂区青山南の而立社から、『歴史物傑作選集』の一冊として刊行されている。これはタイトルの「李太白」を始めとする佐藤の「歴史物」八編を収録したものだが、その巻頭に「編…