2022-01-01から1年間の記事一覧
前回、神近市子がバハイ教のアグネス・アレグザンダーの部屋の常連であったことにふれた。高杉一郎は『夜あけ前の歌』において、主として『秋田雨雀日記1』に基づくと思われるが、「エロシェンコはとりわけ神近市子がすきであった」と記し、続けて次のように…
これも高杉一郎の『夜あけ前の歌』で教えられたのだが、「バハイ教」と題する一章があって、エロシェンコの来日と同年の大正時代の日本に、アグネス・アレグザンダーがその布教のためにやってきて、住みついていたのである。(『夜あけ前の歌』) 「バハイ教…
22年8月の書籍雑誌推定販売金額は801億円で、前年比1.1%減。 書籍は423億円で、同2.3%減。 雑誌は378億円で、同0.2%増。 雑誌の内訳は月刊誌が315億円で、同0.3%増、週刊誌は62億円で、前年同率。 返品率は書籍が37.9%、雑誌は41.8%で、月刊誌は41.5%、週刊…
エロシェンコの人脈の中にはエスペラントや社会主義運動関係者以外にも親しい人たちがいて、高杉一郎は『夜あけ前の歌』において、「あたらしい友だち」という章を設け、大正九年に東京大学に入学した正木ひろしや福岡誠一の名前を挙げている。(『夜あけ前…
魯迅とエロシェンコの関係もあって、藤井省三の『東京外語支那語部』(朝日選書、平成四年)も読み、文求堂が東京外語グループによる『現代中華国語文読本』『支那現代短篇小説集』『魯迅創作選集』を刊行し、教科書革新運動と魯迅の紹介を担ったことを教え…
本探索1308、1309、1310と続けて魯迅にふれたので、ここでエロシェンコとの関係にも言及しておくべきだろう。魯迅の『吶喊』は北京の文芸クラブ新潮社の「文芸叢書」第三巻として刊行されたのだが、その第二巻は魯迅訳によるエロシェンコの『桃色の雲』であ…
前回の昭和十年代の東洋、支那、アジアという出版のコンセプトからただちに想起されるのは、吉本隆明の「〈アジア的〉ということ」(『ドキュメント吉本隆明』1、弓立社、平成十四年)である。その「序」にあたる「『アジア的』ということ」で、吉本はヘー…
続けて日本評論社「東洋思想叢書」や大東出版社『支那文化史大系』にふれてきたが、昭和十年代に入ると、東洋、支那、アジアにまつわる企画が多く出されるようになり、それらは単行本にしても、シリーズ物にしても、かなりの量に及んだと推測される。 (「東…
前回、大東出版社「東亜文化叢書」を挙げたが、その後、浜松の典昭堂で同社の『支那文化史大系』の一冊を入手している。これは菊判函入の学術書的装幀と造本で、巻末広告によれば、全十二巻とある。そのラインナップを示す。 1 呂思勉 小口五郎訳 『支那民族…
日本評論社の「東洋思想叢書」は企画編集者の赤木健介によれば、当初全八十三冊の予定だったとされる。ただこの「叢書」は『全集叢書総覧新訂版』にも記載されていないので、赤木が挙げている長与善郎『韓非子』を入手して確認してみると、「刊行予定書目」…
藤井省三『魯迅「故郷」の読書史』では近代中国における「故郷」の読書変遷史がたどられているのだが、日本での魯迅の受容とそのプロセスはどのようなものであったのだろうか。 それは前々回、竹内好訳『魯迅文集』第一巻所収の「故郷」をテキストとしたこと…
藤井省三は『魯迅「故郷」の読書史』において、「近代中国の文学空間」というサブタイトルを付しているように、「故郷」をコアとする国家イデオロギーのパラダイムの変容、つまり「近代中国文学の生産・流通・消費・再生産の物語」を描き出そうと試みている…
前回、エロシェンコの帰郷にふれて、魯迅の「故郷」を挙げたこともあり、この作品にも言及してみよう。それは『エロシェンコの都市物語』を著した藤井省三の『魯迅「故郷」の読書史―近代中国の文学空間』(創文社、平成九年)も合わせて読み、とても触発され…
22年7月の書籍雑誌推定販売金額は745億円で、前年比9.1%減。 書籍は397億円で、同6.9%減。 雑誌は348億円で、同11.5%減。 雑誌の内訳は月刊誌が284億円で、同13.4%減、週刊誌は63億円で、同2.4%減。 返品率は書籍が41.8%、雑誌は43.8%で、月刊誌は44.1%、週…
エロシェンコは大正十一年の『改造』九月号に「赤い旗の下に—追放旅行記」、後の「日本追放記」(『日本追放記』所収、みすず書房)を残し、日本を去っていった。それからの上海や北京での生活は、藤井省三『エロシェンコの都市物語』で描かれているが、『改…
藤井省三は『エロシェンコの都市物語』において、中村彝が描いた「エロシェンコの肖像」をカバー写真に採用している。また魯迅が東京留学中に文芸誌『新生』を準備していた際に、表紙画にするつもりだったG・F・ワッツの「希望」、及びその構図との類似が連…
前回ふれたエロシェンコは『日本アナキズム運動人名事典』だけでなく、『近代日本社会運動史人物大事典』『日本近代文学大事典』にも立項されるという異例の扱いを受けている。それはいずれもかなり長いもので、この盲目のロシア人が、いわばアイコン、もし…
盲目の来日アナキストとして、エロシェンコの存在はよく知られているし、それはロシア人にもかかわらず、『日本アナキズム運動人名事典』にも一ページ近い立項があることからも明らかだ。 しかしエロシェンコと親しく、同じ盲目で、「日本のエロシェンコ」と…
片山潜をめぐる人々として、その両頭とでもいうべき田口運蔵や近藤栄蔵に言及してきたが、異色の人物に挙げられる永岡鶴蔵にもふれておくべきだろう。そうはいっても僥倖のように、永岡に関しては中富兵衛による「犠牲と献身の生涯」というサブタイトルが付…
一九二〇年=大正九年に片山潜はアメリカ当局による検挙の危険から、大西洋を臨むアトランティック・シティに逃れ、自伝と社会主義論を書いていた。 これらのうちの自伝のほうは翌年に室伏高信の手にわたり、『改造』に連載され、『自伝』として改造文庫化さ…
『近藤栄蔵自伝』で、片山潜の在米日本人社会主義者のメンバーに高橋亀吉が挙げられているのを初めて知った。高橋の名前を目にしたのはかなり前のことで、確か谷沢永一の『完本紙つぶて』(文藝春秋、昭和五十三年)においてだったと思う。 あらためて『紙つ…
『近藤栄蔵自伝』には暁民共産党事件と相前後して、ビー・グレー事件が起きたことへの言及がある。この事件に関しての詳細は近藤にしても判然としないし、実相はつかめないとされるけれど、次のようなものだった。 前回の反軍プロパガンダに対する警視庁特高…
前回の在米日本人社会主義団が結成される以前から片山潜に寄り添っていた人物がいて、それは近藤栄蔵である。彼は片山門下において、田口運蔵と並ぶ重要なコミンテルン関係者であり、幸いなことに田口と異なり、同志社大学人文科学研究所編『近藤栄蔵自伝』…
前回、「大庭柯公問題」をめぐるコミンテルンの在米日本人グループと日本グループの構図にふれたが、前者は一九一九年=大正八年に片山潜を中心として結成された在米日本人社会主義団のメンバーを主としていたし、田口運蔵もその一人に他ならなかった。その…
22年6月の書籍雑誌推定販売金額は861億円で、前年比10.8%減。 書籍は440億円で、同10.2%減。 雑誌は421億円で、同11.4%減。 雑誌の内訳は月刊誌が352億円で、同13.5%減、週刊誌は68億円で、同1.3%増。 これは刊行本数の増加と『an・an』のBTS特集の即日重版…
本探索1288の荻野正博『弔詩なき終焉』を読むことで、田口運蔵が大庭柯公問題に深く関わっていたことを教えられた。これは大庭と田口の大正十、十一年のモスクワ滞在が重なっている事実からすれば、意外ではないけれど、荻野による田口の評伝の刊行によって…
出版は前々回の「社会科学叢書」から十年以上後になるが、続けて同じく日本評論社の『日本歴史学大系』を取り上げておきたい。この『大系』のことは清水三男の『日本中世の村落』を入手したことで知ったのである。本体の裸本は背のタイトルも読めないほどだ…
大鎧閣は前回の石川三四郎『改訂増補西洋社会運動史』に先行して、大正六年に北一輝の『支那革命外史』を出版している。 それを知ったのは、みすず書房の『北一輝著作集』第二巻所収の『支那革命外史』に付された「本巻のテキストについて」によってだった。…
前回のシンクレア『資本』の表紙カバーの裏面はめずらしいことに、日本評論社の一八〇冊に及ぶ出版目録となっていて、ここで初めて目にする書籍も多く、あらためて日本評論社も全出版目録を刊行していないことを残念に思う。それだけでなく、裏表紙は「社会…
前回の『セムガ』の前田河広一郎はやはり昭和五年に、同じ日本評論社からアプトン・シンクレア『資本』を翻訳刊行している。両者が併走するかたちで出版されたことは裏表紙見返しの『日本プロレタリア傑作選集』の広告が伝えていよう。そのリストは本探索1…